建築士の頭脳と、大工の技術をもつ実直な職人
小林稔
株式会社小林建築
昭和53年の創業から、地域密着で家づくりを行ってきた小林建築。二代目の稔さんは大工としての高い技術力がありながら、宅建や建築士の資格も取得。土地から設計、現場までトータルでサポートし、お客様一人ひとりの理想とする住まいを実現している。
大工になるつもりはなかった
「小さい頃から大工をやるつもりはありませんでした」そう語るのは、小林建築の二代目である小林稔さん。幼い頃から現場が遊び場で、大工である父親が働く姿を見ていたという。「中学1年生の頃に父が大病したことが転機でしたね。それで『俺が家を守る』と思って、中学を卒業してすぐに大工になったんです」
中学卒業後、病気を克服した父親のもとに弟子入り。大工修行はとても厳しいものだったという。 「いやあ、厳しかったですね。でもどんなに厳しくても、耐えていく覚悟はありました。それまで親にはたくさん迷惑をかけてきたからね。独り立ちできるまでは7~8年かかったかな」
宅建、建築士の資格を取得した理由
父親の元での厳しい修業時代を耐え抜いた小林さん。大工としての技術には自信があるが、さらにお客様から信頼を得たいと宅地建物取引士と二級建築士の資格を取得した。そのきっかけは、20代前半のこんな出来事だったという。
「修行時代は月3万円のお小遣いだけでお金がなかったから、夜に現場が終わったあとバイトをはじめたんです。ジェットスキーがほしくて(笑)1年間バイトしたら30万円貯まったから、中古なら買えると思って銀行にお金を下ろしに行って…。それで30万円にぎりしめた瞬間“これは道楽に使えないぞ”と。その足で日建学院へ行って、宅地建物取引士の資格取得の講座費用に充てました」
宅建試験には一発合格。それから3年後、今度は二級建築士の資格を取得した。 「図面を書くのに、建築士の資格をもっていたほうが説得力があると思って。今は建築士協会にも入って、建築士試験の試験員もしています。あのとき諦めたジェットスキーはその後、親戚からもらえたからよかったよ(笑)」
5年前に法人化し、同時に不動産事務所と建築士事務所を開設。お客様に対してお手伝いできることが増え、仕事の幅も広がったという。
「不動産事務所を開設したのは、世間一般で見ても土地と建物はセットになっているから。これで土地から探しているお客様がいれば、土地探しからお手伝いできるようになりました。他にも不動産に関連した工事が、とても増えましたね。たとえば空き家を当社で買って、外構は他の業者にきれいにしてもらい、家の中は私たちで修繕して販売することもしています」
事務所内お客様との打ち合わせスペース
お客様は財産
小林建築では積極的な営業活動はほとんどせず、すべて<ご紹介>でお客様とつながってきたという。父親の代からどんな小さな修理でも断らず、お客様の要望には誠心誠意応えてきた。 「お客様は財産だからね。家のドブ掃除から電球交換まで、なんでもやってきました。例えばいま、お客様から『電球が切れたからどうしよう』って電話がかかってきたとしたら、『すぐには行けないけど、この現場の作業が終わったら行きますね』と伝えます。もちろん緊急だったらすぐに行きますよ。そういう小さな積み重ねが、今のご紹介につながっていると思います。父は小さい仕事を本当に馬鹿にしなかったので。それは見習うべきところですね」
ヒアリングから、設計、施工までほとんどすべての工程に関わる小林さん。全行程を把握したうえで柔軟に対応できるのは、地域密着の工務店ならではの強みだ。しかし一つひとつの家に細やかな対応をしているからこそ、どうしても時間はかかってしまうという。
「最初のご提案から契約までは、早くて3ヶ月くらい。昼間は現場で大工作業、夜間や日曜に設計をしているので、やはり時間はかかってしまいます。いまは『それでもいいよ』というお客様に選んでいただいている状態です。アフターケアも旭から1時間圏内であればなるべく即日対応しますが、それより遠方の場合はすぐには行けないので…。遠方のお客様には契約前に『即日対応できない場合もあります』と正直にお伝えしています」
ライフスタイルに合わせた提案を
新築のお問い合わせがあれば、なるべくお客様の家に訪問するという。そこに住むご家族のライフスタイルを把握したうえで間取りに反映するのが、小林さんのこだわりの一つだ。
「事務所にきてもらうんじゃなくて、なるべく一度はお客様の家にお邪魔する形で。そうじゃないと、お客様のリアルな暮らし方がわからないじゃないですか。特に<朝起きてどうする、買い物帰りに 荷物はどうする>といった奥様の動き方を考えて、プランをご提案しています」
ご家族の30年後の姿まで想像しながら、限られた予算や敷地のなかでベストな形を模索する。理想の住まいを実現するため、細かい要望にもていねいに応える。そのようにお客様一人ひとりの暮らしに寄り添えるのが、地域に根付いた工務店の魅力でもある。
「うれしかったのは、お客様に言われた 『オーダーメイド住宅だね』っていう言葉。そんな意識はなかったけれど、すごくハッとしたんです。図面ではわからないような細かい部分…例えば棚やコンセントの位置なども一つひとつ施工中の現場で確認していくので、お客様にもとても喜んでもらえますね。どこもやっていることかもしれないけれど、ていねいにと心掛けている部分です」
バラエティ豊かなデザイン
小林建築には、標準仕様というものはない。バラエティ豊かな工法があるなかで、お客様の予算や要望にあわせたものを提案している。
「例えば施工事例にある平屋は、昔ながらの<からかさ天井>という細工を施しています。伝統的なデザインですが、女性のお客様から『なにこれ!モダンですね!」と言ってもらって、逆に新しいんだなと発見もあります。他にも無垢の床を敷いたり、オーダーメイドの棚をつけたりしています」
からかさ天井以外にも、天井の中央が高くなった<船底天井>など、多彩なデザインを取り入れているという。プレカットではなかなか実現できない、技術ある大工ならではの巧みな技だ。
大工として確かな技術がありながらも、宅建や建築士の資格を取得し、建築士試験員としても活動される小林さん。その風貌から、昔ながらの頑固で話しづらい大工さんかと思いきや、実際に話をしてみると、そのイメージが間違っていたことに気づく。とても気さくで、言葉の端々からお客様へのこまやかな気配りが感じられた。
「この仕事を続けているのは、お客様とのバカ話が楽しいからかな(笑)でも本当に信頼してもらえて、住まいという大切なところでつながっているから、冗談も言ってもらえるんじゃないかなと思っています。これからも<お客様は財産>という父が大切にしてきたことを引き継ぎながら、お客様に笑顔になっていただけるお付き合いを増やしていきたいですね」
電話:0479-55-4585
URL:https://www.e-house.co.jp/kobayashi-kenchiku/
住所:〒289-2613 千葉県旭市後草600-1(地図で見る)
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