経験を基に気付いた”いい家”の共通点
鈴木 和彦
鈴⽊建設株式会社
千葉県旭市で1971年に創業。地元では公共工事を行う建設会社としての知名度も高いが、イシンホーム千葉東総としても20年以上、新築戸建ての建築実績がある。大手ゼネコン出身、一級建築士でもある3代目の鈴木和彦社長を筆頭に、女性スタッフが多く在籍する工務店。
経験を基に気付いた”いい家”の共通点
「住宅事業を始めたのはおよそ20年前です」そう語る3代目の鈴木社長。大学卒業後は大手ゼネコンに就職し、現場監督として活躍。バブル真っ只中の当時、入社2年目で9階建てのビルの施工管理を一人で任されるなど貴重な経験を経て旭に戻った。「あの頃の経験は大きいです。職人さんや同僚へのマネジメント力が育まれました。憧れの建築業界で楽しい一方、ほぼ寝れなかったのでとても苦しい時期でもありましたけどね」(笑)
一級建築士の資格を取得し本格的に住宅事業を開始。25歳の時には勉強のためと、手探りで自分の家を建てた。そこで学んだことを基に集客を図るが軌道に乗らず、岡山に本社のあるイシンホームのフランチャイズに加盟。「イシンホームはハウスメーカーではありません。集客や、お客様への提案方法などのノウハウを提供する会社です」。そこで教わったノウハウを地域に合わせて独自に進化させることで、住宅事業は徐々に軌道に乗りだしたが、しばらくすると社長の頭からある考えから離れなくなった。「”いい家”ってなんだろう?ってずっと考えていました。そして、自分が”いい家”と思えないものをお客様に販売したくない。そんな葛藤が続いていたんです。でもあるとき”いい家”には共通点があることに気がつきました。わたしが思う”いい家”の設計やデザインには、すべて女性が携わっていたんです」。
建てた人が入社したくなる社長の人柄
現在、鈴木建設にはコーディネーターやプランナーなど6名の女性社員が在籍している。入社10年目のコーディネーターの高野さんは、女性目線でのデザインや設計を当初から牽引してくれたひとりでもあり、入社前に鈴木建設で家を建てたOBさんでもあった。「社長はお客様の一番の味方だと思います。当時からとにかく一生懸命でした。ここでなら楽しく働ける。それが10年前に入社した理由です」。インテリアや配色にこだわる高野さんのハイレベルな要望に、当時から社長は全力で応えました。「家はひとりのものじゃないんです。家族のものなんです。そこに住む人全員の細かいご要望を、嫌がらずに全力で丁寧に応える。そこを理解できるスタッフでないと、同じ方向を向いて働くことができません」。確かにお会いしたスタッフさん全員に共通することは”丁寧で優しそう”と思わせる第一印象だった。「お客様だけでなく、工務や設計など役割の違うスタッフが、お互いに気持ちよく仕事ができるようにも日頃から心がけていますね」高野さんは笑顔で付け加えた。
スタッフ全員がお客様のご要望を把握
1年前に⼊社したプランナーの伊藤さんは、ウェディングプランナーとして14年の経験がある。「まだまだ経験は浅いですが、ウェディングも、家を建てることも、⼀⽣に⼀度という共通点があります。お客様の⼈⽣の節⽬に⽴ち会える素敵な仕事です」と、優しいトーンと落ち着いた⼝調で話す。はじめてのお客様は、まずは伊藤さんと相談することから始まる。打ち合わせは室内がイメージしやすいLDKを模したスペースで。その後は、住宅設備、内装、インテリア、構造、外構など、段階ごとにその担当者と打ち合わせを⾏う。ひとつの物件に関わる⼈数は多く、スタッフ全員がお客様のご要望を把握。「着⼯後は、施⼯状況の写真をLINEで細かくやりとりすることで、現場になかなか来られないお客様でも状況を把握できるよう対応しています」。
注⽂住宅はお客さまと我々の合作
「お客様へのお返事は、理由をつけて丁寧に」とは社⻑が常にスタッフに話していることのひとつ。例えばAとBを選ぶ際、お客様からはどちらでもいいよと⾔われたとしても、安易に、あいまいに、適当にAを選ぶことはせず、明確な理由をつけてAを選ぶということだ。「注⽂住宅はお客様と我々との合作です。お客様のアイデアに、我々プロのアドバイスを組み合わせることで、本当に満⾜する作品が完成します。また、建築現場では誰も悪くないのに発⽣してしまう不具合が多々あるんです。そういう時に、そればかりに囚われないでほしい。利益が多少減ったとしても、前を向いて次の糧にすればいい。最後にはよかったねと笑っていたい。そんなこともスタッフには⽇頃から伝えています」。
コミュニケーションを大切にする匠
社長のポジティブな精神は、現場の大工さんにも受け継がれている。「大工歴は25年になります」とは飯岡出身の伊藤さん。大工だったお父様に憧れて弟子入りし、当時から厳しい職人の世界で続けてきた。
「昔といまとでは、大工も働き方が違います。昔は個人的に受注して好きなように建てていましたが、いまは工務店さんと一緒に建てるスタンスに。働き方が変わると、大工の考え方も変えなければいけないと思うんです」と話す伊藤さんは、とにかくコミュニケーションをとることを大切にしています。「寡黙だった父親とは対照的に、工務店さんとも、一緒に作業する業者さんとも、もちろんお客様ともコミュニケーションを活発にとります。自分でわかる範囲であればお客様の質問にも答えます。そ うすることで現場が進みやすくなるし、お客様からも信頼していただけます」。大工さんには声をかけないでという業者さんもあるなかで、伊藤さんは全体での情報共有が大切と考える。
「社長には技術的にも、人間的にも育てられました。わたしがまだ若くて生意気な頃、現場で細かく指示をする社長に反発したこともありましたが、社長の指示通りにやっているといつの間にか受注が増えて安定してきたんです。この人は間違えたことはしていないんだとわかりました。この15年間で、鈴木建設さんとはそういう信頼関係ができています」。そこには変わらない技術と柔軟な考えを併せ持つ、伝統的な匠の姿があった。
家が無くなるまで続くアフターケア
「もちろん、15年前のお客様へもアフターケアを続けています。何か不具合があるとすぐに出向きます。家の撤去や建て替えで、文字通り建物が無くなるまでケアを続けます。家は完成してからがスタート。住んで初めてわかることが多いんです。そんな中、当社の点検やアフターを経験されたOB様がなお、ご友人などをご紹介いただけることは本当に嬉しいし、ありがたいです」。地域密着をポリシーとする鈴木建設は「働きがいのある会社、自ら行動できる人づくり」を目標に掲げて、これからも会社と地域の未来を担っていく。