専属大工の手作業で、1棟ずつ丁寧に

戸諸 智

株式会社 戸諸工務店

4代続く⼤⼯の家系。100年の伝統に裏打ちされた⼤⼯の職⼈技「墨付け」「⼿刻み」加⼯にこだわる⼯務店。すべてが専属⼤⼯の⼿作業で、気持ちを込めた丁寧な施⼯が評判となり、いまでは施⼯待ちのお客様がたくさんいる⼈気店。WEBサイトではこだわりや事例、施⼯途中など充実した独⾃のコンテンツを閲覧できる。

株式会社 戸諸工務店

⽗から学んだ仕事の姿勢

古くから地域の家屋を⽀えてきた⼾諸⼯務店は、曽祖⽗の代からおよそ100年続く⼤⼯の家系。幼いころからものづくりが好きだった4代⽬の⼾諸智社⻑は、⾼校、⼤学と建築設計を専攻し、卒業後は千葉市の建設会社へ⼊社した。「住宅を年間100棟くらい建てるゼネコンのような会社で実務経験を重ねました。様々な⼯法を経験したり、規模の⼤きな現場で同僚や業者さんをマネジメントした経験は貴重でした」。

1983年、先代の⽗親が会社化した当時は、神栖市波崎に住宅展⽰場を持ち、数⼗⼈の専属⼤⼯を抱えて営業をしていた。しかしバブル崩壊後はその動きも鈍くなり、26歳で⽗の会社へ⼊社したころには、ビジネスとしてちょうど過渡期だったという。「⼊社後しばらくはCADでの図⾯作成や現場管理を⾏っていました。そんな中、苦境を乗り越え、お客様⼀⼈⼀⼈との出会いを改めて⼤切にして、お互いに喜びあえる信頼関係を⼀から築いている⽗の背中からは、家つくりだけではなく、仕事に対する姿勢も学びました」。

受け継いだ技術と最新の技術

在来木造住宅のプレカット率は、現在では90%を超えている。予め工場でコンピューターによりカットされた木材を、金物で接合し補強することが主流となっている時代に、戸諸工務店ではいまなお、大工による昔ながらの墨付け、手刻みにこだわり続けている。

「これは当社が神社仏閣建築などで培ってきた真似できない技術。100年続けてきた財産です。文化という意味でも、これは守り続けなければいけません」。さらに聞けば、基礎には昔ながらの割栗石を敷き、木材には集成材ではなく全て無垢材を使うなど、基礎や躯体には昔からのこだわりを受け継ぎ頑丈にする一方、住み心地に関係する下地や断熱には、最新の技術や工法を採用している。「すべてはお客様に喜んでいただくためです。時間と共に、家も人も技術も成長します。こだわりは守りながらも、時代にあったご提案をしています」

専属大工の手作業で、1棟ずつ丁寧に

戸諸社長は情報発信にも熱心だ。「WEBサイトは15年前に自分で作りました。当社のこだわりや施工事例だけでなく、完成後は見えなくなる箇所(壁の中や基礎、屋根裏など)も、施工途中の情報として公開しています。お客様の不安をなくすために、お客様目線で更新しています」。15年続けている社長ブログもあり、いまではWEBサイトからの新規のお客様が6割にもなるという。

「初めてのご来店から、お打ち合わせはすべてわたしが担当します」という戸諸社長。まずはヒアリングから始まり、予算や図面の打ち合わせだけでなく、手刻み加工中や建築中、竣工後など、多様な現場見学もできる。「打ち合わせはお互いが納得できるまで、だいたい3ヶ月くらいはかかりますね」。しかし打ち合わせからスムーズに契約となっても、すぐに施工開始できるとは限らない。いまでは多くのお客様が施工を待っている状態だ。「すべて専属大工の手作業です。1棟ずつ、丁寧に施工しています。1人の大工に2棟かけもちはさせません。だから年間で建てられる棟数は決まってしまいます。供給体制が追いつかないことは、お客様には申し訳なく思っています」。

品質管理につながる大切な”気持ち”

<かけもちはさせない。1棟ずつ、気持ちを込めて施工する>これも社長のこだわりだ。「かけもちをすると、大工さん1人が1棟にかけられる時間が少なくなります。かけられる時間はその家に対する熱意・気持ちに影響すると考えています。その気持ちが大工作業にも反映されて、品質が落ちてしまう可能性もあります。だから、1棟に集中することがとても大切です」。お客様からは見えない部分ではあるが、このこだわりが手作業による一番大切な<品質管理>に繋がっている。「幸いにも当社を信頼いただいて、施工時期を待っていただけるお客様がほとんど。ありがたいことです」。

同じ地域で暮らす人を裏切らない

お客様とは信頼関係を大切にしたい戸諸社長。すべてのお客様とのゴールは”お互いに気持ちよく、長く住み続けられる家”を作ること。「お客様との長いお付き合いの中で、お互いに良い関係でいたい。だから打ち合わせや契約の段階から、疑問点をすべて解消していきます。同じ地域に暮らす同士、絶対に裏切ったりしたくないし手も抜きたくない。人として当たり前のことを真っ当にやっていきたいだけです」。

期待に応えるための施工エリア

“墨付け””手刻み”の家つくりに惹かれた遠方のお客様からの問い合わせも多々あるが、施工エリアを広げるつもりはないという。「この地で100年やってきました。人との繋がり、地域との繋がりを大切にしたいんです。施工エリアを広げると、アフターケアが疎かになってしまいます。必要なときにすぐに出向くことができません。”お互いに気持ちよく、長く住み続けられる家”ではなくなってしまいます。緊急時でも素早く駆けつける。お客様のそんな期待にも応えていきたいから、施工エリアは会社から車で60分圏内の東総地区がメインと決めています」。

手刻み大工に憧れた高校生

一般的には60代以上と言われている大工の平均年齢だが、戸諸工務店に所属する6名の大工は最高齢で51歳、その他は20代~40代までと、比較的若い部類に入る。「昔ながらの手法を守り続けるには、職人を育てていく必要があります。うちの若手はベテランと組んで、技術を習得しています。しかし技術もすぐには習得できないので、いまから十数年先を見据えた育成を行う必要があります」。文化を守り続けるために、人材育成も積極的に行う戸諸工務店。嬉しいこと今年、卒業後に大工になりたいという18歳の就職希望者がいた。「でもその子には、まず専門学校に行くことを勧めました」県が運営する東金の専門学校では、大工・建築の基礎を1年間学習できる。しかも入学金や授業料が無料だ。「大工も家と同じく”基礎”が大切。しっかり学習した彼がまた、当社の門を叩いてくれることを期待しています」。

100年間受け継いできた文化を、最新のツールを介して発信していく戸諸社長。手刻み大工に惹かれた高校生がいたように、社長が発信し続ける情報は、家つくりを考えているお客様に対してだけでなく、これから社会に出る若者の人生にも大きな役割も果たしていた。

株式会社戸諸工務店
電話:0479-63-2800
URL:http://www.tomoro.co.jp/
住所:〒289-2505 千葉県旭市鎌数9558-1(地図で見る

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