いいものを創るために必要なこと

林 和義

株式会社ハヤシ⼯務店

明治後期から5代続く⼤⼯の家系。「⼼地いい」「気持ちいい」「質がいい」をポリシーに、⾃然の⼒と上⼿に付き合う、デザイン性と機能性の⾼い注⽂住宅に定評がある。2019年には初の規格住宅“ALL”をリリース。

株式会社 ハヤシ工務店

⺟からの初めての頼みごと

「⼤⼯は⼤嫌い。なりたくありませんでした」。そう語るのは、ハヤシ⼯務店5代⽬の林和義社⻑。当時は⾃宅が事務所のため、職⼈の出⼊りが頻繁にあったそう。朝は作業の指⽰でうるさく、学校から帰ると毎⽇、酒を酌み交わして騒がしい。思春期になるとその光景がとても下品に⾒えた。「耐え難いほど嫌気が差し、⾒下して、その頃は⼤⼯という職業⾃体が⼤嫌いでした」。

⾼校卒業後、進学を機に上京。様々な業種・職種のアルバイトを経験した。「当時は普通のバイトで、⽉に60万円以上稼げていました」。そんな中、22歳のときに旭に戻り、⼤⼯⾒習いとして家業に⼊った。あれほど嫌っていた⼤⼯になぜ。「きっかけは、今は亡き⺟から伝えられた『親⽅(⽗)を⼿伝ってほしい』という⾔葉でした。それは、それまで私を叱ってばかりだった⺟から、初めて居住まいを正して頼まれたことでした。昔から⺟には反発してばかりでしたが、どこかで認められたいという思いがあったんです」。

その後、⼤⼯の基礎から、⼿刻みや墨付けなどの技術を⽗から教わり、学んだ。「穏やかではありませんでした。祖⽗とは毎⽇のように⼤喧嘩。どこかでまだ、⼤⼯が好きではなかったんです。さらには、当時の⾒習いの給与は⽉8万円。都内でのバイト代にも程遠く、⽉に数百万円稼ぐ同級⽣もいて劣等感もありましたが、“俺はもっとできるはずだ”という根拠もないですが(笑)⾃信だけはあったんです」。

肌で感じた時代の変化

25歳で建築⼠とインテリアコーディネーターの資格を取得し、27歳での結婚を機にこの道で⽣きていくことを決めた。同時に、変わりゆく時代の流れを感じていたという。

「⽗の時代は化粧造りや数寄屋造りなど、いわゆる昔ながらの家を多く建てていました。しかし、⼤⼯に頼んで化粧の家を建てていた地元の地主農家が、⼤⼿の住宅メーカーで家を建て始めました。時代の流れです。親⽅や先代から続く、昔ながらの住宅を建てる⼈が減少していくことは明らかでした。これは変わるぞと、肌で感じた時期です。⽗には技術ではかなわないこともわかっていました。だからそのような家づくりから少し距離を置いて、⾃分で作りたい家を考えて、⼀⼈で請け負うようになっていきました。親⽅の下での⾒習いの5年間で、⼿刻みや墨付けなどの⼤⼯仕事は⼀通りできるようになっていましたから」。

いいものを創るために必要なこと

15年前にいまの場所に移った。LOHAS INというブランド名や、「⼼地いい」「気持ちいい」「質がいい」というポリシー、“お客さまと⼀⽣涯お付き合いできる会社”という社是も当時から変わらない。ハヤシ⼯務店で造られる注⽂住宅にひとつとして同じものはないが、すべてに共通することはこのポリシーを原則として造られることだ。

「お客様との最初の⾯談はわたし(社⻑)が⾏います。そこでは我々の家づくりへの思いや、地元の⼤⼯で続けてきたことなどをお話しして、まずは私たちのことを知ってもらいます。その後、プラン作成のためにヒアリングを⾏います。これは、わたし以外にもスタッフが必ず同席します。住まい⼿さん側も、同居される⼤⼈の⽅、全員の同席をお願いしています。どんな⾵に暮らしたいか、どんな⽣き⽅をしたいか、⼦育てや⼈⽣についてなどお伺いします。住まわれる⽅全員と2時間以上かけてお話することで、私たちはお施主様のことを深く理解することができます。その後、敷地の使い⽅などは、プレゼンを⾏う前のラフの段階で確認して(ゾーニング共有)、そこから更に詳細なプランを作り込んでいきます。」

プレゼンにかかる費⽤は、税込22万円で前払いだ。それだけ真剣にお客さまのプランを考え抜き、社内で会話を重ねる。「資料制作の際は設計スタッフと激しくぶつかります。旦那さまの意⾒と違う、奥さまはこっちの⽅が使いやすい、そもそもこういう暮らし⽅は望んでいないなど、意⾒をぶつけ合います。いいものを創ろうとしているから当然のことです」。

理想の暮らしを叶えてあげたい。⼈としての熱い気持ちが表れるプレゼンテーション。実際の施⼯例を⾒ても、シンプルかつ洗練されたデザイン群に圧倒される。どのようにしてこのような住宅は出来上がるのか。

「建築家や設計事務所と⻑く仕事をして、美しく住まうこと、美しい住空間に⾝を置くことを常に意識するようになりました。特に空間、天井⾼や全体の魅せ⽅には気を遣っています。極端な⾔い⽅ですが、美術館のような住まいを作ることは可能です。しかし、性能を担保しようとすると莫⼤なコストがかかります。それは住まい⼿にとってはデメリットでしかありません。家づくりで⼤切なことは、美しさ、性能、コストなどすべての要素のバランスです」。

いままでの経験を詰め込んだ規格住宅“ALL”

耐震性、気密性、断熱性、省エネ性能など、住宅性能を表す指標はたくさんある。そんな中、ハヤシ⼯務店は2019年9⽉、初めての規格住宅“ALL”をリリースした。

「夏涼しくて冬暖かい、しかも空気がきれい。10年後には、このような⾼性能な家はあたりまえになります。しかし、性能を上げれば上げるほど、富裕層しか建てられないほどにコストが⾼くなる。でも当社はそうではないよということを伝えたくて“ALL”を創り、価格・性能・住み心地のベストバランスを追求しました。しかも、上棟の1⽇で屋根や扉までつけてしまうので、施⼯中に⾬に濡れません。建築中には⾬ざらしになることが不可抗⼒だった在来⼯法のなかでは、画期的な商品です」。

ハヤシ⼯務店の造る住宅は気密、断熱、耐震など、⾼い数値を維持している。現場でも実証を⾏いその結果をオープンにしている。その根底にはなにがあるのか。「お客さまが安⼼して住まわれる住宅です。数値で勝負する気はありません。あくまでも当社のポリシー、⼼地いい、気持ちいいを突き詰めるために、なぜ⼼地いいと感じるのか、その根拠として数値を出して実証しているだけなんです」。

⼤⼯を守るために挑むこと

「最近は育成塾を通して⼤⼯を育てています。今年で3回⽬になりますが、国交省の事業の⼀環で千葉県全域の若⼿⼤⼯が対象です。わたしが受講したいほどの⼀流の講師陣なんですよ」。林社⻑は忙しい仕事の合間を縫ってまで、育成塾の中⼼メンバーとして活動している。「住宅業界の技術進化のスピードはとても早い。進化についていくために必要なことは施⼯の技術、さらに⾔えば施⼯の精度です。ここがおろそかになると、せっかくの住まいの⼯夫が活かせません。だから、⼤⼯を育てるんです」。昔ながらの職⼈技術だけでなく、新しい⼯法に必要な技術も出てくる。その技術がなぜ必要なのか、知識とともに伝えると、若⼿はどんどん吸収していくという。

ハヤシ⼯務店は7名の⾃社⼤⼯に加え専属⼤⼯が3組、臨時⼤⼯が2組と計およそ16⼈の⼤所帯だ。しかしながら若⼿の採⽤はとても難しいという。「⼤⼯の仕事はすごく魅⼒的ですが、体⼒も必要で危険も伴います。そしてその割りに収⼊は…というイメージがぬぐえません。やりがいと収⼊、そして職場環境の改善は、経営者の考え⽅次第でいくらでも変えることができると思っています。だからこそ、弊社ではそれを実証したい。これからの若い⼤⼯が誇りと責任をもって現場に挑めるような環境を作るのは、年⻑者の役割ですから。」。社⻑が熱く語るその⽬からは、若⼿時代に抱えていた⼤⼯への嫌悪感は⼀切感じられなかった。

⾜らないを知るということ

「地元の⼈間なので、引退するまでここで家づくりをしていきたいです。だからこそ、いい加減なことはできないし、質だけはゆずれません。もう、いい加減なことをしたら⼀発で信⽤を失いますから。地元は早いですよ、そういうの(笑)」。

端から⾒ると完成された会社に思えるが、⾜りないことや直すべきことは、まだまだたくさんあるという。しかしそれは、常に新しい情報を追い求め、次なる⽬標を設定しているからこそ、⾜りないことがわかるということだ。「俺はもっとできるはず」― ⼤⼯⾒習いのころのあの⾃信を信じて、⼒強く進んできた社⻑の意欲は、あの時代からいまなお続いているように感じた。

株式会社ハヤシ工務店
電話:0120-600-534
WEB:http://lohas-in.net/
“ALL” WEB:https://lohas-in.com/
住所:〒289-2714 千葉県旭市三川12156-1(地図で見る

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